2制度を確かめる家計管理
医療費控除の基本:10万円を超えなくても使える場合と、対象外になりやすい費目
医療費控除は「年10万円を超えたら」と覚えられがちですが、総所得金額等が200万円未満の人は5%が基準です。対象になる費目とならない費目、タクシー代とガソリン代の扱い、セルフメディケーション税制との選択関係まで、国税庁の公開情報をもとに整理します。
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医療費控除は「年間10万円を超えたら使える」と覚えられがちですが、10万円という数字は全員に当てはまるものではありません。 収入によっては、もっと低い金額から使えます。
また、「医療費」という言葉の範囲が、日常の感覚と制度上の定義でずれています。通院にかかった交通費でも、手段によって対象になったりならなかったりします。
この記事では、国税庁が公表している内容から、基本の計算と、判断が分かれやすい費目を整理します。
計算の基本
国税庁によると、医療費控除額は次のように計算します(出典: 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm )。
(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填される金額) − (10万円、または総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセントの金額)
最高200万円が上限です(出典: 同上)。
10万円ではない場合がある
差し引く額は、通常は10万円です。ただしその年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額になります(出典: 同上)。
| 総所得金額等 | 差し引く額 |
|---|---|
| 200万円以上 | 10万円 |
| 200万円未満 | 総所得金額等の5% |
たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引く額は7万5千円です。10万円に届かなくても控除が使えるということになります。
パートやアルバイト、年の途中で退職した年、育休中など、その年の所得が下がっている場合には、この条件が効いてくる可能性があります。
対象になる期間
対象は「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費」です。そして、未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象になります(出典: 同上)。
つまり基準は診療を受けた日ではなく、支払った日です。年末に治療を受けて年明けに支払った場合、その医療費は翌年分になります。
対象になるもの・ならないもの
国税庁が挙げている主なものを整理します(出典: 国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm )。
対象になるもの
- 医師または歯科医師による診療または治療の対価
- 治療に必要な医薬品の購入費(風邪薬など)
- 病院などへの収容費、入院の際の部屋代や食事代
- あん摩マッサージ指圧師、はり師などによる治療のための施術費
- 看護師などによる療養上の世話の対価
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費
- 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手・義足・補聴器・眼鏡などの購入費
- おむつ代(医師の証明書が必要)、骨髄移植・臓器移植のあっせんに係る費用
対象にならないもの
- 健康診断の費用(原則として)
- ビタミン剤など、予防のための医薬品
- 医師への謝礼金(原則として)
- 家族による付添料
- タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除く)
- 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金
交通費の扱いに注意
いちばん誤解されやすいのがここです。
通院費は対象ですが、タクシー代は、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き含まれません。 また、自家用車のガソリン代や駐車場代も対象外と明記されています(出典: 同上)。
つまり対象になるのは、原則として公共交通機関で通院した場合の運賃です。領収書が出ないことも多いので、日付・経路・金額を記録しておくと明細書を作るときに役立ちます。
また、義手・義足・補聴器・眼鏡などの購入費用は、医師等による診療や治療を受けるために直接必要なものとして対象に挙げられています。国税庁は、眼鏡の購入費用について、一般的な近視や遠視の矯正のためのものは医療費控除の対象とはならないとしています(出典: 国税庁 質疑応答事例 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/53.htm )。判断に迷う場合は税務署に確認してください。
セルフメディケーション税制との関係
医療費控除には特例があります。
セルフメディケーション税制は、「健康の保持増進および疾病の予防への取組として『一定の取組』を行っている居住者」を対象とし、スイッチOTC医薬品(医療用から転用された市販薬)等の購入費について控除を認める制度です(出典: 国税庁 No.1129 セルフメディケーション税制 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm )。
控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額から12,000円を差し引いた金額で、最高88,000円です(出典: 同上)。
なお、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」では、この特例のうちスイッチOTC医薬品の購入の対価に係る部分は適用期限を撤廃し、それ以外の医薬品の購入の対価に係る部分は適用期限を5年延長するとしています。あわせて、対象となる医薬品の範囲を見直し(消化器官用薬などを対象に加え、痩身又は美容を目的として使用される可能性がある医薬品を除外する等)、令和9年分以後の所得税について適用するとしています(出典: 財務省 令和8年度税制改正の大綱 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_01.htm )。
「一定の取組」とは
次のいずれかを行っていることが要件とされています(出典: 国税庁 No.1129 同上)。
- 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
- 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
- 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
勤務先で実施する定期健康診断を受けていれば、この「一定の取組」に当たります。
併用はできない
重要な点として、この特例の適用を受ける場合は、通常の医療費控除を併せて受けることはできません(出典: 同上)。選択適用であり、あとから変更することもできません(出典: 同上)。
つまり、その年についてどちらか一方を選ぶことになります。
- 医療費が多かった年 → 通常の医療費控除
- 医療費は10万円(または5%)に届かないが、市販薬をよく買った年 → セルフメディケーション税制
判断の目安としては、通常の医療費控除の基準額に届いているかどうかを先に確認し、届いていなければセルフメディケーション税制を検討する、という順番になります。届いている場合でも、市販薬の購入が多い年は、両方の計算式で控除額を出して比べてから選んでください。
対象商品かどうかは、領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されているので確認できます(出典: 同上)。
手続き
医療費の領収書から**「医療費控除の明細書」または「セルフメディケーション税制の明細書」を作成し、確定申告書に添付**します(出典: 国税庁 No.1120 同上)。医療費通知がある場合は、それを添付することで明細書の記載を簡略化できます(出典: 同上)。
医療費控除を受ける年は確定申告が必要になるので、ふるさと納税のワンストップ特例は使えなくなります。この点は医療費控除がある年のふるさと納税で扱いました。
申告書の作成を任せたい場合
明細書や確定申告書は自分で作成できますが、ほかの所得もまとめて申告する年など、作成に不安がある場合は税理士に依頼する方法もあります。依頼先を探す手段のひとつとして、税理士紹介センタービスカス(運営:株式会社ビスカス)は、確定申告に対応する税理士を無料で紹介し、紹介サービスの利用に費用はかからないと公式サイトで案内しています。税理士に依頼する際は税理士に支払う費用が別に発生するとも案内されているので、依頼内容ごとに見積もりで確認してください。
まとめ
- 差し引く額は原則10万円ですが、総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセントです。10万円に届かなくても使える場合があります。
- 控除額の上限は200万円。対象は1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費です。診療日ではなく支払日が基準になります。
- 対象になるのは診療・治療の対価、治療に必要な医薬品、入院の部屋代・食事代、公共交通機関での通院費、診療や治療を受けるために直接必要な義手・義足・補聴器・眼鏡など。
- 対象外は、原則として健康診断や医師への謝礼金、予防のためのビタミン剤、家族による付添料、公共交通機関が利用できない場合を除くタクシー代、自家用車のガソリン代・駐車場代です。
- 公共交通機関の運賃は領収書が出ないことが多いので、日付・経路・金額を記録しておきます。
- セルフメディケーション税制は、一定の取組をしている人がスイッチOTC医薬品等の購入費について受けられる特例で、12,000円を超える部分・最高88,000円です。
- 通常の医療費控除とは選択制で、併用できません。あとから変更もできません。
- どちらも「明細書」を作成して確定申告書に添付します。
申告書の作成を税理士に依頼するかどうかは、依頼内容と見積もりを確かめてから決めてください。
ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で国税庁などが公開していた情報にもとづくもので、税制は改正される場合があります。個別の費目が対象になるかどうかの判断を含め、具体的な申告内容については所轄の税務署または税理士にご確認ください。
参考
記事の確認に用いた公開情報です。
- 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) (確認日:2026年9月17日)
- 国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費 (確認日:2026年9月17日)
- 国税庁 No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制) (確認日:2026年9月17日)
- 国税庁 質疑応答事例 医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用 (確認日:2026年9月17日)
- 国税庁 No.1155 ふるさと納税(寄附金控除) (確認日:2026年9月17日)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9) (確認日:2026年9月17日)
- 税理士紹介センタービスカス よくある質問・相談 (確認日:2026年9月17日)
- 税理士紹介センタービスカス 確定申告対応の税理士を無料でご紹介 (確認日:2026年9月17日)